すべてはたまたま。偶然という必然。ジンルイの社会システムなど虚像の世界でしかないのに。

月曜~金曜の五日間、アルバイトをしている。

9時~17時、8時間拘束で、そのうち12時から13時までの一時間は昼休みだ。

場所は新宿だが、昼食に西武新宿ぺぺの地下にあるボンラスパイユという自然食品店でパンを購入することが多い。

木のひげパンのカンパーニュが一番好みだ。ないときは別のパンを囓る。

天気の良い日は道端に腰掛けて大都会から見える太陽を浴びながらパンをかじるが、昨日は雨だったので新宿の巨大地下道にもぐってパンをかじっていた。

男性に声をかけられた。日本人と東南アジア人の中間くらいの容姿で、英語と日本語が半々くらい。

新宿から中野まで行きたいらしく、当然電車移動だと思ったので、JRの駅までの道を案内した。

しかし、彼は徒歩で行きたいと言う。どうやら、お金がないらしい。

新宿から中野なら徒歩でも一時間あれば着くと思うが、1000円あげた。小銭はなかった。

わたしは“正しい人類など存在しない、全ての人間は矛盾を抱えて生きている”と思っている。だから、人を信じないし、自分すら信じない。更に言えば人間のことば、言説はもっと信じない。

したがって、彼の言ってる“ことば”は信じない。それを踏まえて、彼の抱えている人生のドラマは一体どんなものだろう?

何がどうなって、今わたしの前に無一文で彼は現れたのか?彼が語ったとて、わたしには真偽の程はわからない。善も悪もないのだ。

すべてはたまたま。偶然という必然。それでもわたしは少しの間、“損をしてしまった”と思えてしまった。

それも、たまたまだと思うが、情けなさが一瞬よぎり嫌な風が吹いた。

でも、なんだか妙に体調がよく心は穏やかだ。

ジンルイの社会システムなど虚像の世界でしかないのに。